【悲報】パリで携帯盗まれた!

ついに、遭ってしまいました。今年の五月に買ったばかりのLG Nexus5との突然のお別れでした。




事件時の様子を報告します。事件直後は、犯人に、治安の悪さにムカつき、自分自身にムカつきました。数日経った今、現実を受け入れているのか、苛立たなくなった。




パリジャン、友好的
朝五時頃、パリ、モンパルナス駅近くのベンチで寝ているときに、それは起きた。こう書くと間抜けで、盗まれても当然だと思うでしょう。夜中にシャンゼリゼ通りやエッフェル塔などを観光するとすごくきれいなのです。しかし、それ以上に、お金もなかったのでホテル代を浮かしたかった。また、言い訳のように聞こえるが、現地民は優しくフレンドリーな方々が多い。New Yorkのように目が合う通行人のスマイルはもちろん。迷子になっていると声をかけてくれて助けてくれる。自転車で転倒し路端で動けずにいると通りがかる殆どの車が停車して大丈夫かと声をかけてくる。チケットマシーンを前に困っていると、通行人がチケットの買い方を教えてくれる。夜中の三時に外で「空港?駅?送っていくよ、乗れ乗れ」と言われ、不安ながら断りきれず乗ると本当に送ってくれる。一人、一人を見ると、とても暖かく、時間や心に余裕がある。冷たく忙しい人々に溢れる東京から来ると、感動すらする。町内会で「傘を貸そうとする不審者に注意」だの「挨拶男が発生」だのと回覧板がまわる、悲しい警戒心に包まれた日本から抜け出し、晴れ晴れとしていた。渡航前、アジア人は人種差別されるだろうなどと卑屈になっていた僕にとって、感激はなおさらだった。

男二人組、接近

チャリで夜通しパリを観光するのに疲れた僕は、ベンチで寝ていた。始発まで一時間ほど寝ようと思った。すると、ポケットがもぞもぞして、目を覚ましました。思えば、これは携帯を探そうとして漁られていた感触だったのでしょう。起きると、男二人組が両隣にいて、<<Telephone, telephone>> (アクサン打てない) と言うのです。寝ぼけてた僕は、「携帯のバイブレーションかな、電源切ってたはずなのに、何でだ」と思って携帯を手にとった。そのときだった。

携帯、奪取

無口な男が強引に携帯を横取りした。「知恵が遅れてるのか?何が物珍しくて携帯を触るんだ?」と思って、取り返そうとするも、力づくで携帯を離さない。猛烈に眠いながら、これはヤバいんじゃないかと気づいた。一方、もう一人の男は"Vodka, vodka"などと言いながら酔っているふりをして凭れ掛かったり、膝枕を強要してきたり、抱きしめてきたり、手を握ったりして、気を逸そうと、僕の手が携帯に伸びないよう制圧しようとしてくる。

携帯を取り返そうと目をやったとき、いつの間にか男が手にしているのがiPhoneにすり替わっていた。手品師か、お前は。携帯をどこにやったと聞いても、「何のことだ」ととぼけている。この頃には、僕も完全に目が覚めていた。カバンやポケットを探してもなかった。男が持っていたのは明白だった。僕は無口な男に、携帯をどこへやったのかと、追求した。男はポケットを裏返すなどして、潔白を主張するどころか、僕の不注意でどこかへ落としたと主張してきた。「もちろん、ポケットのようなわかりやすい場所にあるか」などと思いつつ、どうしたら取り返せるか必死に考えた。下手に刺激して逆上したりしたら面倒くさい。隠しポケットがあったのかもしれない。見つからない以上、どうにもならなっそうだった。いくら追求しても、二人とも白を切ろうとする。酔っ払っているふりをする男は、「この携帯を使え」といってボロい携帯を渡してくる。そうじゃないだろと怒ると、酔っ払う振りの男は警察に電話をしてくれた。いや、後でわかったが、警察に電話をするふりをしてくれた。「ポリース?ヒポポタマス・カフェの前、イタリアン・バーの前です。」などと話していた。男の言葉は全てフランス語だった。男たちは親切心を装い自分たちの携帯のSIMカードをプレゼントしてくれようとしたが、僕には理解できなかった。その様子が彼らには異常に写ったらしかったし、今でもその行動に真意がつかめない。

男、逃走

そうしていると、ぼくの携帯を隠し持つ無口な男は帰ろうとしだした。止めようとすると、逆ギレを始めた。頭を指しながら<<malade?>> (お前は頭がおかしいのか?) などと罵り始めた。こちらも胸を突き飛ばすなどして止めようとするが、すると酔っ払い風の男が俺をホールドして一緒に警察を待とうなどと言い出す。振りきって無口な男を追うと、男は走りだした。僕も懸命に追ったが、ここで問題が起きた。ショルダーバッグのベルトが壊れ、バッグが足元に――足元というより、走っていたので、落ちたのは後方だった――落ちた。バッグを見捨てて追いかけようかと一瞬迷った。だが、パスポートを宿に忘れたとはいえ、バッグには復路のTGVチケットや財布やカードが入っている。拾った。既に男の姿は闇に消えていた。

無力感、絶望、そして挫折


写真や連絡先はGoogleのCloudにあるので問題なかった。昨晩の上手にできたスパニッシュオムレツとスモークサーモンとレタスのサラダの写真、前日のアヴィニョンとアルルの写真が消えたこと、残りの日数カメラなしで過ごすことよりも辛いことがあった。二年契約にも関わらず三ヶ月間でNexus5とお別れしたことでもない。それは、防げた盗難を防げなかった間抜けで愚かな自分自身への絶望感だった。土地にも慣れ、海外で単身やっていけるんじゃないかと感じていた矢先の、途方も無い無力感、挫折だった。何となくだが、痴漢に遭った女性が、事後、立ち上がれないほどショックで、失望の底に沈み、警察にも行かず、男性不審になることに共感した。僕も、立ち上がる気力はなかった。今更どうにもならないと、警察に行く気もしなかった。日常茶飯事の軽犯罪ごときで、犯人など捕まる期待は持てなかった。もはや警察を信用していなかった。パリジャン全てに不信感を抱いた。フランス語の勉強も嫌になった。パリが嫌いになった。東京に帰りたくなった。

犯人は、巨躯の黒人でもない、とても平凡な、普通すぎる20代の白人二人だった。しかも、携帯を隠したあとも、ポケットを裏返したり、潔白を主張するなどし、逃げずに数分間は目の前にいた。にも関わらず、僕は何もできなかった。身ぐるみ剥がそうかと思った。下着一枚にして徹底的に調べようかと思った。でも、しなかった。警察署でやるべきだと思ってしまった。下手に刺激して暴力沙汰になり2対1のケンカになっても面倒だと思ってしまった。

チームプレイがうまく、強盗に慣れていたように思う。それにしても、盗られたことの無力感でものすごい自己嫌悪になる。被害に遭うのは女の子だけだと思っていた。携帯は気がついたときにはスられているものだと思っていた。友人の女の子が、フランスではないが、酔ってタクシーに乗っていて気が付くとスマートフォンが友だち揃って無かったり、夜道でスマホ歩きしていたら黒人に奪取された話を聞いていたからだ。まさか、自分が目の前でのんびり強引に盗られると思っていなかった。体を抑えつけされるとも思ってなかった。むしろ、日頃会う人が善良な人たちばかりだから、目の前に現れるのはいい人たちばかりだとすら思っていた。その脳天気な勘違いは裏切られた。海外の洗礼を受けた。その後も、まず、朝に鉄道料金の罰金で33ユーロとられた。旅行先のモンフォール・ラモリーが桁外れのど田舎で何もできず、モーリス・ラヴェル博物館へ徒歩45分など地図なしでは到底不可能だった。仕方なくフォンテーヌブローに行ったものの、タクシーを呼ぶための電話もないためバルビゾンへ行けず、ふんだりけったり、泣きっ面に蜂一日だった。スリのせいで一日厭な気分で過ごすはずが、最悪の気分で過ごすことになった。もうフランスはごめんだ。

スイスとフランスは陸続きに隣り合っているのに、何でお前らの治安はそんなに違うんだ。下記記事も興味深いのでリンクさせていただく。

次回、盗難届の取得に続く
続編:【悲報】パリで携帯盗まれた!続編~盗難届の取得~



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