書評: ビジョナリーカンパニー

書評: ジム・コリンズ (著), ジェリー・I. ポラス  (著), 山岡 洋一 (訳)(1995). ビジョナリーカンパニー. 日経BP社

経営学の有名な本です。How Google Works に引用されていたのをきっかけに知り、紐解きました。




感想


面白い

とても面白い本でした。僕のように、日頃経営学に触れることがなく、就職活動やスタートアップに関心がある人にはぜひとも手にとっていただきたい。例えば、技術ベースで会社をつくるべきか、最初に事業案を決めてから会社作るべきか、なぜ大手企業は宗教じみたものが多いのか、ワンマン社長にならないと会社作れないのかなど、疑問はたくさんある。それらの問いに、本書は答えてくれる。

昨今のスタートアップCEOの記事は登壇者ごとに言うことの共通点が見えない

最近、スタートアップを立ち上げることが流行っており、年ごとに新たに誕生する会社の数も増加傾向にある。一種のベンチャー企業ブームだとも言われている。それに伴い、多くの著名な経営者の私論を目にする機会も多い。Deopbox、TwiterやソフトバンクなどのCEOのトークは検索すれば簡単に見つかる。それぞれに相対立する部分があって混乱するかもしれない。そういうときも、本書を見てほしい。

全く知らなかった企業経営が見えてきた

企業経営や未知の分野など全てそうだが、わからないものに対して人は恐れる。自然現象、超常現象、猟奇的犯罪なども、そこにしかるべき因果関係を解明できず、畏敬する。理解を超えたもの、予想できないもの、制御できないものに対して、人は呪術的な因果関係を見出す。祈祷や豊作の祈りや雨乞いもそうだ。人は、わかるようになって初めて、それが怖くなくなる。僕の場合、全然知らない経営学も同じだ。全く何もわからないのでは、どう扱ったらいいのか、どういう態度をとるべきかも、わからない。勉強し、解明していくことで、恐怖は消え、啓蒙される。

対象

会社経営を始めたい人、会社に雇われている社員、就職活動をしている学生に広く読まれるべき一冊です。会社というものがどのようなものであるかを比較研究することで優良企業や難関企業と世間で言われる企業を相対化でき、企業がどういった場所かを知るのに非常に役立つ。ビジョナリー・カンパニー2も非常に評判がよいので気になるところです。

インターネット時代にも通じるか

本書の内容が21世紀のインターネット時代、スタートアップ売却の時代にも通じるかも気になるところです。本書は、映画『ファイト・クラブ』のように、創業者や設立者が去っても勝手に稼働する自律的な組織を生み出すためにあるものです。だから、時代を超えて通じるものであるし、むしろ、最近の売却を狙ったスタートアップと違って、題目の"BUILD TO LAST"にあるように、本書は百年後も存続する会社を作る指針です。


内容

順を追ってまとめた。

商品サイクルを超えて、経営者が交代しても、時代が変わっても、人の尊敬を集めるような会社、すなわちビジョナリー・カンパニーに共通する性質はあるのか。同じ時期に設立し、同じような事業をしていた二つの会社でも、金メダル級の会社と銀メダル級に別れることがある。ビジョナリー・カンパニーも創業から失敗続きだったりしたものがあるし、当初は比較企業よりも伸び悩んでいたものがある。それらの会社の命運を分けたのは何だったのだろうか。比較研究によって違いを明らかにし、その問に答える。

会社というのは、作るものだ。会社を作る目的が会社を作ることだと言ってもいい。すばらしいアイデアを実現することや、売上を伸ばすことや、配当を多くすることが目的ではない。企業そのものが究極の作品なのだ。

利益を重視するべきか、社会的インパクトを重視するべきかというORの質問に答える必要はない。両方とるべきだ。

ビジョナリー・カンパニーには、基本理念がある。それは時代が変化しても変わらない。比較対象企業には、基本理念がないか、あっても会社文化に浸透していない。基本理念は何があっても変わってはならない。品質を経営理念として経営してきたが、時代がスピードを重視するようになった場合、どうするか。そのとき、品質ではなくスピードを重視するなら、それは基本理念ではなかったということだ。基本理念は変えてはならない。会社の行く末が見失われる。コンサルティング会社の意見や、新たな流行で変わるものは基本理念にならない。10の会社があったら10の基本理念があってよい。他社の基本理念をマネする必要はない。自分たちが心の底から大事だと信じられることを基本理念にするべきだ。理念の内容が大事なのではなく、どこまで理念を貫き通せるかが大事だ。

どのようにして基本理念を会社全体に浸透させるか。一つは、社運を懸けた大胆な目標を掲げることだ。この目標に向かって全社一丸となって取り組む。その目標を達成して会社が中だるみしたり、余韻に浸ったりしないようにする必要がある。再び新たな目標を掲げたり、社内競争を促すような仕組みが必要だ。

また、カルトのような文化を作ることも大事だ。そう言うと若干の気持ち悪さがある。ビジョナリー・カンパニーは、決して個人崇拝ではなく、企業崇拝だ。教科への努力、同質性を追求し、エリート主義の三点がある。具体的には、社内のみ通じる特別な用語を使う。他と交流できない辺境に研修施設や学校を作る。社内から人材を登用し、若い時期から会社の価値観に合わせて社員を形成する。従業員持株制度を導入する。英雄的な社員の伝説を吹き込む。社歌や拍手喝采や宣言文によって仕事への熱意を高める。賞やコンテストを基本理念達成のために努力した社員には報いる。会社の理念に忠実な失敗には寛容だが、理念に反した間違いは罪悪として最悪の場合は解雇する。ビジョナリー・カンパニーは誰にとっても働きやすいわけではなく、基本理念が個人の価値観に合う者には最高の職場環境だが、価値観の合わないものは排斥されるか去るしかない。

事業は進化する。ビジョナリー・カンパニーは、大量のものを試して、うまくいったものを残す。卵を一つのバスケットに入れず、いくつかのバスケットに分けるリスクヘッジをする。政策や時代の変化によって中核事業がつぶれても、基本理念だけは固持しつつ、事業を転換する。機軸から離れないのではなく、基本理念から離れないことが大事だ。その際にはワンマン経営はよくない。経営者の顔色を伺った消極的な動きをしてしまう。権利は分散させ社員に自由と裁量を与えなければならない。多くのものを試し、うまくいったものだけを残す姿勢は、ダーウィンの進化論のようだ。その企業が次にどのような動きをとるかは誰にも想像がつかない。

経営陣は社内から登用するべきだ。会社の基本理念は給与や事業や社員にいたるまで徹頭徹尾一貫させなければならないし、その作業は徹底的に行う必要があり、終わることはない。特に、経営陣は会社の基本理念を心の底から理解して信じていなければならない。上がぐらつくと会社全体がぐらつく。そこで、会社内の人間を経営陣として採用するのだ。社外の人間を採用するのは薦められない。会社の基本理念に合わない決断をされうるからだ。

満足してはならない。どんな大胆な目標を達成しても、そこに満足して弛んだり安心してはならない。大事なのは、社内を常に不安にしておくことだ。会社は将来に渡って持続しなければならない。自己満足の病と戦うために、社内競争を取り入れたり、部門の業績を先月と比較したり、競合からの視点を常に意識するなど現状に満足せず、どんな不況でも逆境でも将来にわたって投資することを忘れてはならない。



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