書評: ロバート・キヨサキ『金持ち父さん貧乏父さん』

書評: ロバート・キヨサキ『金持ち父さん貧乏父さん』, 筑摩書房, 2000

2000年に出版され、世界3000万部のベストセラーです。負債ではなく資産(不動産、有価証券、債券など)を買って増やしていこう、ということが書いてあります。年功序列が崩れ、年金システムが懸念されていた時勢だからこそ、ヒットしたのでしょう。




本書概要

本書は、お金についての教育のような本でした。通常の人は、たくさん勉強して、いい大学に入って、いい会社に入ることが成功だと思っている。しかし、いくら働いてもお金についての悩みは消えることがない。働けば働くほど税金はとられ、家を買えば固定資産税がとられててしまう。カード料金を払うため、子どもをいい大学に行かせるため、なおさら懸命に働かなければならない。著者はその状態を「ラットレース」と呼ぶ。これは、お金についての教育がされてなくて、お金についてよく知らないからだと著者は言う。

そのラットレースを抜け出すために、家や車といった負債ではなく、不動産や有価証券といった資産を獲得することをすすめる。資産は、自分が働かなくても勝手にお金を生み出すものだ。そして、税金対策のため、会社を作って全て経費で落とすべきだというのだ。最初に税金が天引きされる所得と違い、会社では経費を差し引いて残った売上に対して税金がかかるからだ。

そして、目先のものではなく、長期的な学習を意識して、消耗品を買い漁るのではなく、分野を問わず貪欲に学んでいくことが大事だと言う。




感想


投資を煽る小説

一言で言うと、投資によって楽して金稼ぐことを煽る本でした。本当は楽じゃないと思いますが、本書中ではとても楽そうに演出しています。これは、お金に関する教育書や不労所得を得る福音書のようなものではなく、ロバート・キヨサキが市場や情勢を見極めて、そのとき一番売れることだけを考え、ベストセラーを狙って書いたものに過ぎないと思います。実際、Wikipediaを見て分かる通り、金持ち父さんがいたのかも怪しいし、金持ち父さんの話はフィクションです。本書では、お金に関する知識をちゃんと学習すれば、不労所得が簡単に手に入ると説いています。読み手に「自分にもできると思えてくるだろう。あくせく働くより、楽して稼げ、しかも金持ちになれるなんて、すばらしい」と夢をみさせてくれます。だって、今までまともに働いてきたのは、お金について知らなかっただけで、今後学べば不労所得が手に入るって言ってくれるのですから。こういう本って多いですよね。


投資は本書で言うほど単純ではない

投資は単純ではない。本書では、お金について学べば、失敗することはあっても、トータルでは成功すると言っている。しかし、その言葉以上に不動産の運用も、株や為替も難しい。LTCMやリーマン・ブラザーズは破産した。実際、不動産にしたって維持費や修繕費がかかるし、株や為替で失敗する人など毎年山のようにいます。実際、アメリカでも本書に憧れて不動産投資に走った方がたくさんいたでしょうが、サブプライム危機で散っていきました。もちろん、筆者の責任は問われません。その点、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」、「チーズはどこへ消えた?」といったビジネス書、自己啓発書といった、読んでも何も残らなさそうな本の系列に並ぶのかもしれません。こういった本のおかげでちくま学芸文庫のような本を販売できるのかと思うと、ありがたい。


投資で金持ちになれることは社会物理学でも傍証されており一理ある

社会物理学では、金持ちは運です。運良く投資が成功し、それで得た利益をまた投資にまわして成功し、それで得た利益をまた投資に回して成功することを繰り返すことで、利益を倍々に生み出す人が金持ちになります。それは実力や洞察力とも呼ばれるかもしれませんが、そのような運が大事らしいです(マーク・ブキャナン『人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動』)。その点では、本書の主張全般が無意味ではないです。事実、多くのビリオネアの投資家は存在しているのですし。


著者の破産申請では自己破産傷つかず

ところで、ロバート・キヨサキさんは三度も自己破産されていたのですね。本書中では、当然そのような苦労話は出てきませんでした。だから、本書を読んで単純に憧れるのではなく、実際のところ、彼がどの程度成功していたのか、また書かれなかった著者の失敗や危機についても意識しておく必要はあるのだと思います。








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