書評: 木下是雄(1981)『理科系の作文技術』, 中央公論新社

 理科系の作文技術を読みました。本書は「東大教授が新入生にすすめる100冊」にも挙げられています。大学に入ってから、いつかは読まなければと思いつつ、読んでいませんでした。修士論文の擱筆前には読もうと思っていましたが、ついに先日のクロアチアでの暇な時間に読み終わりました。




 著者は文系の文と理系の文を対立させて薦めます。文系の文はポエムや小説のように、扇情的だったり、叙情的だったりしまし。一方、理系の文は事実と意見を分けて単純明快に伝えることが目的です。日本では文系の作文技術ばかりが育ち、米国で幼い時期から教えられるEnglish-Composition、もしくはrhetoricに相当するものが日本では皆無だと嘆く (rhetoric、即ち修辞学は、米国の一般教養で「言語によって情報や意見を明快に、効果的に、表現・で夏するための方法論」である)。 (P.11)

 本書の前半では、意見や情報を明確、有効に伝達するテクニックが展開されます。それは、誤解の余地がないように書く方法でもあります。例えば、次のようなものです。文と文のつなぎ方、重点先行主義、意見と事実の違い、パラグラフの構成方法、文の構造と文章の流れ、断定的な表現の薦め、読みやすく短い文です。これで約150ページあります。

 この本書の前半部分は、文系も理系も関係なく、皆に読むことを薦めたいです。文系の人でも、文系の文章、理系の文章を対比させることで、文系の文章がどういったものか、改めてが浮き彫りになると思います。さらに、簡潔明快で読み易い文章を書く方法についても考える機会を持つことは、どの人にも大事です。皆さんも次のような経験があると思います。誰かのブログや友人からの連絡のなど中には、何を言おうとしているのかわからず、話題が勝手に転換することも多く、読者がついていけないものがあります。そのような支離滅裂な文を書かないようにすることは、誰しもが必要なスキルなのです。

 本書の後半では、主に科学論文を主体にした話が続きます。科学に関わることは、単位や量記号の書体、原稿での数式や図の書き方、科学論文の種類、科学論文の書き方、科学論文の制度、学会講演のコツや心構えなどです。科学と関係ないものは、メモをとるときに年月日を必ず入れることや、手紙や説明書の書き方もあります。この後半は80ページほどあります。主に理系の学生、特に学生実験やレポートを控えている学生は読むとよいです。まだワープロの普及していない1981年に書かれた本書は、時代錯誤なところ――特に図の書き方――もあります。しかし、本書で書かれている基本的な心構えやスキルは、今でも科学論文や学会発表の際に参考になります。

 今回の書評は、本書で読んだことに注意を払って書いてみました。今までより読みやすく単純、簡潔、明快だと思っていただけたら、一読しただけの本書の効果覿面であります。


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