書評: 南部陽一郎(1998)『クォーク』講談社

2015年10月
ノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎博士による素粒子物理学の一般向け解説本。物性物理で言われる対称性の破れを素粒子物理学にも適用させた。

この百年間の素粒子物理学の発展を時系列で説明してくれている。数学的な記述は、他の著者に寄る新書などにくらべて、気を配って説明されている。いかめしい数式で記述が進んでいくようなことはないが、難しそうな用語や現象がどんなものであるか、懸命に説かれている。例えば、SU(3)は粒子が3つあるからとか、組み合わせが3^2-1=8通りできるとか。量子色力学の教科書の冒頭で見たことが書いてあった。そのおかげで、わかったような、わからないような気になる。また、対称性があるところには保存則があるとか、クォークの閉じ込めなども書いてあり、入門書にちょうどよさそうに見えた。

著者は主に「対称性の自発的破れ」でノーベル物理学賞をとったので、その点の説明も上手になされている。そもそも真空とは何なのか、ヒッグス粒子に満たされているとはどういうことか。もし巨大な強磁場の物体があったら、それを反対向きに転換できるのか、など。

大学院で素粒子実験、理論などを検討している学部生にもオススメしたい一冊。他の素粒子物理学の新書などよりは、突っ込んだ説明があるからか、中身があるように感じた。

  

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