書評: 安富歩(2011)『生きる技法』青灯社

筆者は東大教授。ブックオフで見つからず、東大の図書館で見つけた。読みやすい文体で書かれている。180ページしかなく、すぐ読めてしまう。1日1冊生活を続けて11日目の本だ。

「自立とは依存することだ」
これは発見だった。これまで、仕事の能力を上げ、経済的に自由になり、誰にも頼らずに済むことが自立だと思っていた。つまり、「お金=自由」だと思っていた。しかし、どこかに違和感も感じていた。その違和感は正しかった。本書は、人は誰かに依存しなければ生きられず、より多くの人に依存できるようになることが自立だと言う。誰かに頼らないと生きていけないことに罪悪感を覚える必要はない。もし、本当に一人で生きていくなら、森で生活したソローのように生きるのだろう。

他にも、本書に挙げられた命題のいくつかを下記に述べる。文字にすると当たり前だと感じるかもしれないが、これを実感するには難しい。この中には、私が20年近くかけてようやく到達したものもあるし、新たな視野を広げてくれるものもあった。

  • 誰とでも仲良くしてはいけない
  • 自由とは選択の自由のことではない
  • 自由とは思い通りの方向に成長することだ
  • 自分を嫌っている限り、本当の友だちはできない
  • 自立は、金では買えない
  • 自己権をは、他人(親や教師など)に押し付けられたものである
  • 自己嫌悪を抱いている限り、失敗が約束されている
  • 「俺は悪くないんだ」と自分に言い聞かせて、自己嫌悪を抑えるのは逆効果である
  • 夢を実現することそのものには、何の意味もない
  • 幸福とは、手に入れるものではなく、感じるものである
  • 成長とは、生きる力の増大である
  • 成長は、願うことで実現される
大学に入るころ、全く新しい環境に飛び込むことになった僕は、自分の友だちを増やしていくことにした。まわりには、何を考えているのかわからない秀才がたくさんいたからだ。四年経ってわかったことは、数には何の価値もないということだった。むしろ、数を増やそうとするあまり、大事にすべき友人に費やす時間や労力をどうでもいい人間に割くことは問題だった。これには、人に嫌われることを恐れていたことも一因である。どうでもいい人間に嫌われることは何も怖くないのだ。

本書は、自己嫌悪についての命題から察せられる通り、幼少期の親との関係に問題を抱えていた人にも読んで欲しい。幼少期こそ、世界にどのような態度で挑むかが決定されるからだ。
自分の本当の感覚を失っているからだ。

難関大学に合格し、難関企業に就職し、若くして役員になり、それで幸せなのだろうか。実は、エリートは必ずしも自信満々ではなく、背後に鬱々とした葛藤や自己嫌悪を抱えていることも多い。そういった方々にも、ぜひ読んでいただきたい。そのような人は、子ども時代にありのままの自分を受け入れてもらったことがないのだ(アリス・ミラー(1996)『才能ある子のドラマ』山下公子訳, 新曜社)。彼らのようなエリートは、ありのままの自分が世界に受け入れてもらえないと思う病気を抱えているからこそ、がんばれてこれたにすぎない。

本書は、自立、自由、幸せなどに悩み、毎日に充足感が持てず、生き方を見失っている人はみな手に取るべきだ。


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